京都陶磁器会館看板吊り金具
京焼・清水焼の発展を願い新しく作られる看板は清水寺の森清範貫主が文字を揮毫され、木彫家でもある養泉寺の一常宗玄住職が彫刻、壁に取り付ける金具は京都の老舗の金物屋が制作することになっていました。
弥三郎さんの遺作展が終わったころに陶磁器会館から看板の受け金具の制作依頼を受けました。作るところが決まっていて、しかもそれを無名の田舎の鍛冶職人に依頼変更するのはそんな簡単なことではないと容易に想像がつきました。実際に話が来てすぐに却下されたようで話が流れています。しかし、そこから京都陶磁器協会の重鎮に自分の首をかけて話を引き戻してくれた職員がいました。自分も職人人生をかけて作らねばと思いました。
依頼は「美しく力強い看板をかっこよく鉄で受けてほしい」でした。鍛冶屋としての自分の名前をアピールする絶好の機会でもありました。
最初に話が来た時には看板はできていました。色々あったので初対面は除幕式の約ひと月前でした。
流れる川のような力強く美しい木目でした。この看板を見た瞬間、この美しさを魅せる最高の方法がひとつはっきりと見えました。それは、鉄の気配を消すこと。木の邪魔をしないことでした。
たまたまですが、この日は私の50回目の誕生日でした。良い記念日となりました。
この金具についてはあえて説明はしません。何十年後になるか・・・建て替えられる時が来て、この看板を下ろされた時、「さすがは陶磁器会館、見えない金具にまでこんな仕事がしてある」と、次の世代の人に思ってもらえたらうれしいです。どこにも私の名前は入ってませんが、誰にも気づかれずにこの看板を支え続ける事を誇りに思います。
除幕式というものに生まれて初めて出席しました。お披露目された看板を見上げて、自分の感覚が間違ってなかったと思いました。この裏に自分の金具がある事にワクワクしました。
そして、老舗料亭での会食へ。
清水寺の森清範貫主と陶磁器協会の重鎮でガチガチの緊張感の中での会食になるのかと思いきや、お酌しに来た女将に「このコップは穴が開いてるんとちゃますか?気づいたら酒が減ってる(笑)」という貫主の言葉に場が一瞬で和んで、今年の漢字の裏話や他にも色んな話を聞かせてもらって本当に楽しい時間でした。最後にツーショット写真にも気さくに応じてくださりました。赤ら顔同士でのツーショット写真は一生の自慢にします。
もどる